大阪某所で落とし込み

涙骨

2015年12月23日 11:34

*今回から文体が変わります。
元々丁寧語での文章は苦手だったので、本来のスタイルに戻らせていただきます。
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釣りができなかった。
環境が変わり多忙を極めていた。
ほんの少しの時間、この一ヶ月半で3時間だけ時間が作れたので行ってきた。

ネットにも情報がない秘密の場所だ。
どんなに釣れたことがあっても、また釣れるとは限らない。
音楽や人間同様、釣りに期待してはいけない。
絶望が基本だ。

いって水の様子を見ると、全くわからない。
闇の中、仕掛けを作る。
一秒でも早く釣りをしたい、焦る。
湘南漁師結びはまだ出来た。

一拾目でリールが逆回転するアタリ。
親指が弾き飛ばされてバラした。
同じ場所を二拾目慎重に探る。
餌の食いが遅い。
鉤がかりさせるために、待つ。
焦る気持ちを落ち着かせるため、ワンフレーズだけ歌を歌うのが良い。
「見上げてごらん夜の星を」
これがいつも丁度だ。

聴く。
かかった。重い。
でっぷり太った良型のカサゴだ。

生殖機らしきものが腹からはみ出している、雄だ。
良かった。メスなら孕んでいる可能性大なのでリリースだった。

探り歩く。
小さなあたりが頻発する。
鉤がかりはしない。
ささめ針のヤイバチヌ1号という小鉤でこれなら無視したほうが良い。
その先でかかった。
20センチ程のセイゴだった。

大きくなって帰っておいで。

初めて足を入れる場所へ。
思いの外、水深が浅い。意外だ、沖なのに。
小物のあたりが消えて、大きめになる。
鉤の小ささが仇か、なかなか鉤がかりしない。
焦るな。
さぐり、いくつかバラす。
妙なあたり、バラしたかと思うと沖に逃げる。
上げてみると、サバだった。

ここは海からかなり川を遡ったところだ。
汽水にしてもここは塩水が強いのだろう。
はじめて来た時、35センチものタケノコメバルを釣ったのだった。
それにしても鯖にはかなり驚いた。
しかもイソメ餌の落とし込みで、初魚種。
小ぶりだが、珍しいので頂いておく。

近くではかなり大型の年無し近いチヌが釣れているようだ。
時合が来たか、焦る。

もう時間だ、帰らねばならない。
最後の一捨。

沈ませる。
遅い食い、大きい。
焦るな。
聴く。
外れてない。
これが最後だ。
逃したくない。
針が唇を通過した模様。
いっそ飲ませてしまえ。
絶対釣るんだ。

持ち上げる。
竿が撓む。
上がらない。
何度も修理して強化した竿先だけ3号相当の1.5号磯竿が、曲がりに曲がる。
跪いて竿を上げる。
タモを用意。
水面に発射。
急激に潜る。
焦らず親指を滑らせタイコリールを開放する。
数メートル潜らせたあとに、巻取り。
少しずつ浮いてくる。
顔を水面に浮かせ、空気を吸わせる。
少し大人しくなってくれた。
銀と黒に輝く美しい魚体。

最後の最後に、来てくれた。
マチヌ、黒鯛、43センチ。
もしかしたらおそらく、今年最後の釣り。
一番好きな魚が来てくれた。

思わず手を合わせる。
悔いはない
いい釣りをさせてくれた。
釣りをやってて良かった。
感謝。